恒例!豚肉ブロックまつり
我が畜産部は月に一度、豚肉ブロックまつりを開催します。
まつりなので、POPもド派手。天井から吊るす短冊のほか、多段ケース上部と下部に履かせる帯POPで売り場を飾ります。もちろんメインはブロック肉ですが、カツ用のジャンボパックも展開します。
ウチの豚肉構成比は高いので、売上と利益を取れる反面、
「あの主任、また豚肉で荒稼ぎしている」と、陰口を言われるのですが。
豚肉ブロックまつりとは?
ヒレ、ロース、肩ロース、モモ、カタ、バラの全部位をかたまりで売ります。
売価にもよりますが、我が畜産部の場合、売れる比率は高い方から、バラ、モモ、肩ロース、ヒレ、カタの順です。
ヒレ
豚肉の中でも単価が高い部位なので、比較的、安価な輸入豚を使う場合もあります。
ヒレの場合、ブロックで買われても、だいたい一口カツにするので、ブロックより少し単価を上げて、一口サイズに手切りしたパックも揃えます。
ロース
他の部位より、動きは鈍いです。品揃え程度に並べますが、ヒレ同様にカツ用として、2枚と3枚に手切りしたパックも揃えます。ブロックより少し単価を上げますが、カツ用の方が動きは良いです。
肩ロース
我が畜産部では、肩ロースは結構人気。パートさんの話によると、家庭でラーメンを作ることが多い土地柄のようで、チャーシューも自家製。メニュー提案として、焼き豚用のネットで包んだパックも並行して揃えます。ネットは手間がかかるので面倒なものの、店長やバイヤーが大喜びするので、お客様の利便性を考えて揃えます。もちろん、焼き豚用ネットも関連陳列。
モモ
モモ肉でも「ランプ」「シンタマ」の部位を使います。解体の仕様によりますが、我が本部のカットは「外モモ」「ランプ」「シンタマ」の3種類。外モモはスライスに向いている部位で、「ランプ」「シンタマ」は形状と肉質からカツ用や焼き豚用に向いています。カレー用としてサイコロ状にする場合も。
ほぼ赤身なので女性に人気があるうえ、いろいろ使える万能部位です。「外モモ」は翌日、薄切りとして特売します。
カタ
筋の少ない個所を選んで背油を薄く引きます。品揃え程度に並べますが、飲食店店主が買うような、マニアックな部位です。味が深いのですが、ご家庭ではスライスした方が使いやすいかもしれません。
ショルダーベーコン、またはバラと合わせた「カタバラ切り落とし(こま切れ)」の知名度が高いでしょうか。ベーコンは炒め物、切り落としは豚汁などの汁物で使うと、味に深みとコクが出ます。
バラ
脂が多いので避ける人もいますが、我が畜産部では売れ筋の花形。脂の多い少ないによって売れ行きは左右しますが、バイヤーも目を光らせているので、ブロックまつり用は赤身の多いものが納入されます。薄切りにすれば、カレーにも焼肉にも煮物にも使える万能部位です。
男性客にも人気のブロック肉
ブロックまつりは、男性客や飲食店にも人気で、奥さん相手にウンチクをたれる夫が出現したり、朝一番で常連の飲食店店主がケースごと買っていくことも。
「背油、少し引きましょうか」
「ああ、そのままでいいや、ここの肉は歩留まりいいから」
もう、右から左の横流しでウハウハです。
午前中はウハウハですが、夕方はハラハラです。
「主任!ヒレ足りますかね。あと5ケースしかありません」
「これはまずい!ヒレのフェース(横幅)狭めて、モモを広げてっ」
「主任!ロースカツが動いてますけど、ヒレと場所変えましょうか」
「ああ、ロース全部下段に降ろそうか。ヒレがあと3ケースしかない」
「主任!在庫のモモがもう1ケースありました。全部ブロックにしますか」
「えーなんでこんなところに隠れてんだよぉ。全部出しちゃって」
「主任!バラがあと2ケースしかありません。狭めましょうか」
「外モモたくさんあるから、もう薄切り作ってバラと変えちゃおうか」
「主任!ヒレがあと2ケースしかありません!」
「えー今日は動き過ぎじゃない?もっとモモを広げてっ」
「主任!ヒレがあと1ケースです」
「ヒャー」
そしていつの間にか、とっぷりと日は暮れ、客の波も引き。
何とか夕方まで持ちこたえたヒレ。
ブロックを切り続け、フェースを広げたり狭めたり、場所を上げたり下げたり。
もう、ぐったり。
ああ、腰が痛い。
ブロック肉がまばらになり、異様にモモの薄切りパックが広がった売り場を眺めながら、
「この仕事、何歳まで続けられるんだろうか」
1人でふけっていると、 サブ君が事務所の方から小走りでやってきて、
「主任!19時で売上目標突破しましたよ!」
「もうPOPと短冊外しちゃっていいっすよね」
若いって素晴らしいですね。