2億円事件とDの大罪
2018年12月31日。
ラーメンチェーン幸楽苑が、新聞に掲載した全面広告。
「2億円事件。」
一部店舗を除き、12月31日15時から翌1月1日を終日休業とする文章。
衝撃的なキャッチに昇天した記憶も新しいまま、本2019年には、セブン-イレブンなどコンビニエンスストアの24時間営業の見直しに続き、ファミリーレストランのすかいらーくホールディングスが、グループ店舗の約8割で、12月31日18時から翌1月1日正午まで休業するという発表が続きました。
外食産業では近年、深夜営業を取りやめたり、元旦を休業とする企業も増えています。決定基準は企業によって異なるものの、働き方改革にしても、慢性的な人員不足にても、収益率にしても、大手チェーン店の舵取りによって、世の中の潮流までも大きく変えるという意味においては、「あの時代」と同じ空気を感じます。
あの時代
現在では当たり前となった、スーパーマーケットの元旦営業。歴史を紐解くと、1990年代のDの開始をきっかけに、ドミノ倒しのように大手から地方のスーパーマーケットまで、同調する流れとなりました。
地方のスーパーマーケットから見ると、当時のDやIは業界のお手本と言われ、社長はじめバイヤーのほか、売り場担当者までごぞって店舗偵察。まさに神様でした。
「Iがやっているから良いことだ」
「Dではこんな売り場を作っていた。ウチでもさっそくやってくれ」
まさに鶴の一声で、各店舗にファクスが送られ「すぐ実行するように」と本部通達。店長が内線で各主任を事務所に呼び出し、ファクス片手に指示を出します。何の疑いもなく、言われるがままに売り場を直した担当者も多いかと。
そして、Dがブチ上げた元旦営業。当時、元旦休業は当たり前の時代。少なくても、従業員にとっては衝撃でした。
「神様が言うのだから、きっと良いことだ」
地方スーパーの上層部も考え抜いた結果なのか、Dに同調する流れで、元旦営業に舵を切ります。本部の中でも賛否両論だった企業もありました。
「協力できる人だけでも出社してほしい」
元旦営業の周知は、事態だけに重役クラスが各店へ説明行脚、従業員を集めての説明会で同意を求めます。
「時代の流れで致しかたない」
「お客様の利便性を考える時代に来た」
「去年はマネになるから、やらないって言いましたよね」
「結局、Dのマネしてるだけですよね」
「どのみち強行するんでしょう?」
「Dの大罪だ!」
不穏な空気のまま、説明会は終了。結局のところ、これが元旦営業の幕開けでした。
あれから20有余年。
神様だったDもIも今は…。
また、大きな潮流はくるのでしょうか。