残暑お見舞い
スーパーマーケットにとって、お盆は年末商戦に次いで稼ぎ時。
帰省準備に勤しむご年配に始まり、帰省した親子連れのご来店によってバーベキュー商材、アイスや飲料水、お土産品の動きも良くなります。海岸線に近い我が店舗の場合、海のクラゲが気になる時期ではありますが、浜辺でのバーベキューや水遊び程度であれば、まだまだ楽しめるのかと。
買い物カートには焼肉セットや野菜セット、スイカや祭壇フルーツ(缶詰)、海鮮バーベキューやウインナー類、惣菜の焼きそばやから揚げ、ビールや飲料水がドンドン放り込まれ、もうウハウハ…と言いたいところですが、同時に入荷も大量になるわけで、バックヤードは通路の確保もままならないパンパンの状態になります。
「ちょっと!畜産主任!いつまでウチの台車を借りてるのよ。早く返してよ」
お局食品主任の小言が始まります。
ウインナー類の入荷が多い時期は、売り場に補充するまで一時的に台車が必要となるわけで。
「すみません。もう少しで売り場の商品が減ってきますから、しばらく…」
大手や中核企業であれば、クリンリネスの観点から部門間の備品貸し借りはしないのでしょうが、片田舎のしがない小型店舗では、そんなことも言っていられません。場合によっては、逆にスペースをお貸しすることも。
昼休みから戻ってくると、畜産部の冷蔵庫に牛乳が台車ごと置かれています。
「あれぇ?サブ君。なんでここに牛乳があんの?」
「パートさんが発注を外したらしくて、売り場の商品が減るまで置かせてほしいそうです」
まあ、お貸しすると言うよりは、勝手に置かれているのですが。
返ってこない台車で文句を言った手前、バツが悪かったのかお局さん。
自分が昼休みで抜けている時に来るとは…さすが。
帰省家族のスケジュールは、大まかに書けばこんな感じかと。
1日目/実家で親戚が集まって、寿司やオードブルで夕食。
2日目/親戚回りやご近所挨拶、お墓参り。
3日目/自宅や海でバーベキュー、親や子どもと自然に親しむ。
4日目/お土産をもって帰省。
売れ筋や客動向は店舗によってさまざまですが、畜産部門のピークはお盆期間の前半、食品部門のピークはUターンラッシュが近づいた後半となり、地元のお土産品の動きが良くなります。新潟らしいと言えば、新潟らしいのですが、大量の柿の種や笹団子が入荷します。乱暴な言い方をすれば、缶入りの柿の種は台車ごと放置しても、空調のきいている売り場やバックヤードであれば、品質に問題は無いのですが、笹団子はそうもいきません。冬であれば常温でも問題はありませんが、夏は基本的に冷凍や冷蔵がメインです。
地方発送で自宅まで送る人も多いですが、新幹線経由であれば新潟から首都圏の自宅まではおおむね2~3時間程度。店舗では小さな発砲クーラーボックスも売っているので、持ち帰りも可能です。もっと言えば、そもそも笹団子の歴史は、戦国時代の携行保存食との説もあり、車や新幹線の中で小腹を満たすのには最適なスイーツ?なのかと。
「畜産主任!冷凍庫空いてる?ちょっとだけ、笹団子を置かせてほしいんだけど」
「ああ…冷凍カルビも一通り売れたんで、場所は空いてます。積んじゃっていいですよ」
「ありがとう!午後の便で結構な量が入荷するから、助かるわ」
さすがにお局主任も背に腹は代えられないのか、自分に直接お願いにやってきました。
まあ、お互い様ですし、売れることは良い事なので、ご協力は惜しみません。
そして、昼休みから戻ってくると、冷凍庫から黄色い声が。
「アーッ」
笹団子の段ボール箱に埋もれるサブ君。
「すみません…冷凍カルビの上に笹団子が乗っていたので、取ろうと思って」
「笹団子を一旦降ろしてから、取ればいいのに」
「パッと引っこ抜けば、パッとうまい感じに取れるかなって…」
だるま落としじゃあるまいし。
全然、うまい感じになっていませんが。
「新潟のスーパー・男性従業員が笹団子の下敷きに」
あやうくニュース沙汰になるところですよ。
と言うか、お局主任も冷凍カルビ2ケースくらいなら、笹団子の上に冷凍カルビを積み直してくれればいいのに。 もっとも、場所を正確に指示していなかった自分の責任ではありますが。
そして、お盆最終日の夜。
サブ君を下敷きにした笹団子も次々と売れ、借りた台車に積んであったウインナーも売り場に出し切り、発注を外した牛乳も20円値下げで何とか売り切り、放置してあった缶入り柿の種の台車も消え失せて、いつもの静けさを取り戻した店内。
ぐったりと疲れて帰宅すると、テレビの画面にはUターンラッシュの渋滞映像が映し出され。
「関越自動車道の上り、花園インター付近で…」
都会の人は大変ですね。
風呂上り。山盛りの茶豆とビールで一人打ち上げ。
もうすぐ、新潟の夏も終わります。