駐車場の怪Ⅱ
スーパーマーケットの駐車場は、いろいろなことが起こります。 以前、印象的だった出来事を「駐車場の怪」として書いたのですが、予想に反してリクエストをいただきましたので、もう少し書いてみます。
もみ殻散乱事件
田園地帯の店舗にとって、秋の稲刈りはとてもうれしい時期。田んぼからそのまま軽トラックで乗り付け、昼食や飲料水など、家族総出でお買い上げいただけるからです。しかしながら、農作業はどうしてもタイヤに泥が付くため、駐車場も泥だらけになります。
田舎に住んでいる人間であれば、別に珍しくも無い景色ですが、ある時、駐車場がもみ殻だらけになったことが。
青果部の担当者から「エントランスや通路に、もみ殻が散乱している」と連絡があり、手のすいている社員で駐車場を確認。すでに日が暮れているうえ、ピーク時で駐車台数も多く、なかなか原因を見つけられずにいました。
「なんでだろう?」
しかし、怪しげな軽トラック1台を発見。刈った稲の一部を自宅でもみすりしたのでしょうか、荷台にはもみ殻が山と積まれておりました。
当然のことながら、店舗前の県道から駐車場まで、もみ殻が散乱。パンくずの道しるべではありませんが、辿っていくと、犯人?の自宅までたどり着くのではないのかと。結果的にお客の靴がもみ殻だらけになり、店内にも散乱したわけです。
店内に響き渡るアナウンス。
「長岡ナンバー4XX…のお車でご来店のお客様。サービスカウンターまでお越しください」
何事かとやってきた、おじい様。
事を説明すると…
「あっきゃ。なんで見てねかったてば!わーりかったのぉ(訳:ああ。何も見ないで運転してしまった!悪いことしたなぁ)」
とりあえず、駐車場と県道までの誘導路は、社員とアルバイトで回収しましたが…。軽トラックを運転される場合は、荷台を確認してからご来店くださいませ。
連続排〇物投下事件
飲食中の方には申し訳ない話ですが、朝出勤すると店舗周りや駐車場に”モノ”が投下されている時がありました。明らかにペットのモノもありますが、どう見ても人間のモノも。ペットであれば、飼い主に向けて告知POPでも立てるのですが、定期的にされている人間のモノは若干面倒です。
1週間以上も毎日、人間のモノを投下されたので、店長が警察を呼んで現場検証したところ、そのような性癖をもつ人間の所業によるところも多いとの話でした。
どうやら「あの、開放感がたまらない」のだと。
2週間を過ぎた頃、困り果てた店長が「防犯カメラ設置」の稟議書を本部に提出しようとした矢先、パタリと所業がやみました。
もちろん、パートさんから社員までウワサでもちきりに。
「この店の誰かが、やったんじゃ…」
「タイミングが絶妙すぎる」
まさかぁ。自分の店の目の前でやりますかねぇ。
多発する人身事故
店舗駐車場における、お客が運転する車同士の追突事故は、基本的に店舗側は責任を負わない旨、多くは看板等で告知されています。もっとも、ブレーキとアクセルを踏み間違えて店舗に突っ込んだ場合は、被害相当分をご請求させていただきますが。
別のお客の車を擦ってしまって、パトカーを呼ぶ場面は多々ありますが、ある時期から、歩行者が絡んだ人身事故がぽつぽつと発生。週末には混雑はするものの、さほど大きな特売もなかったので、珍しいねとパートさんや社員は話していました。
「開店した時から勤めているけど、連続して人身事故なんて聞いたことないワ」
「この街も高齢化が進んでいるから、アタシも運転を気をつけなきゃ…」
しかし、時は過ぎ。
いつの間にか平穏な日々に戻り、すっかり記憶から消えかけていた頃、刑事とおぼしき男性2人がご来店。店長の話によると、当たり屋集団が逮捕されたそうで、供述によるとウチの駐車場でも犯行におよんでいたとか。
以前に、窃盗集団による従業員被害の話を書きましたが、この手の犯罪は本当にやめてほしい。
心臓に悪すぎます。
※最後に駐車場の話から外れますが…
夜の当て逃げ事故
田舎に住んでいると、日常的にさまざまな動物を見かけます。ネコが車道を横切るのはかわいいもので、タヌキやハクビシンが現われたり、ムササビがボンネットすれすれに落下してきたり。田舎道でスピードを出して走るドライバーにとっては恐怖。ある時、同じ店舗勤務だった青果部のサブ君が運転する軽自動車に、イノシシが衝突。
ゆるやかな丘陵が連なる郊外に住んでいたのですが、車の前を横切るならまだしも助手席の真横から突っ込まれ、反動でガードレールにぶつかり車は大破。バンパーが外れ、助手席のドアは大きくへこみ、イノシシの毛が付いているという。その場で警察を呼んだものの、走行不能でレッカー車を呼ばざるを得ず、帰宅したら日付が変わっていたとか。
「いやぁ。がけ崩れでも起こったかと思いましたよ」
車を大破させておきながら、イノシシはそのまま逃げて行ったそうで。
これじゃ、イノシシによる当て逃げじゃないですか。
とんだ珍客
そんな野生の彼らは、餌を求めて市街地まで下りてくるようで。と、言いますか、管轄の保健所と猟友会の話によると、イノシシは別にしても、ハクビシンなどの小動物は街の暗渠に潜んでいることもあり、ライト輝く営業中の駐車場を平気で横切っていく姿も、多く目撃されています。
ある夏の夜、夜間担当者が夕刻に閉め忘れた商品搬入口からハクビシンが紛れ込み、品出しのためグロサリー倉庫で作業をしていたアルバイトの女の子が発見。彼女の悲鳴で大騒ぎになったものの、他のアルバイトが従業員通用口から逃げて行ったのを見たと。
「なんか、毛皮みたいな動物でしたよ」
「あれ、ハクビシンっすね。ウチの畑にも来ますよ」
翌日は社員とパート総出でグロサリー倉庫の大掃除と商品チェック。日を改めて清掃サービスを入れましたが、食料品を取り扱っている人間としては、何とも後味の悪い経験だったなと。幸い、人的被害はありませんでしたが、いまでも思い出すと気持ちが沈みます。
余談まで書いてしまいましたが、田舎の駐車場や公道での珍事にはお気を付けくださいませ。