夢売るスーパー

新社会人が羽ばたく時。
「自分は、どんな輝ける人生を送るのだろうか」
「どんな会社なんだろうか。自分の力を発揮できるのだろうか」

皆さんも、こんな時代があったと思います。
「胸を膨らませている、輝ける未来」を想像しつつ。

仕事に対する熱意、責任感をもった先輩を近くで見ていて、
「よし。俺もこんなカッコイイ大人になってやるぞ」と、
将来像を得る学生アルバイトも、きっと少なくないはずです。

「あんな先輩になりたい」
「あんな仕事がしたい」

売り場で四苦八苦している、従業員の皆さま。
自分が知らぬ間に、目標にされているかもしれません。

反面、
「あんな先輩みたいには、なりたくない」と、思われている場合も。

「店長は本部から帰って来ると、超機嫌が悪い」
「日配の○○サンと、衣料の□□さんは犬猿の中」

これを見ている新社会人の皆さまには、
明日の流通業を支える若者として成長していただきたく、
先輩の見分け方を身につけてほしいです。


挨拶ができない先輩。

接客業の基本は、まず挨拶。
声が小さくて、挨拶のできない先輩は、仕事もできない。

前陳列もしない。
「いらっしゃいませ」も言わない。

笑顔も愛想も無い。
部下にすら、素っ気無い返事と指示。

「ありがとうございました」なんて、
何があっても、口が裂けても、間違っても、頑として言わない。

もっともあなたが、
「わたしは、無口な従業員のお店で、静かに買い物したいわ」と言うのなら、
これから先、売り場でひたすら、無口を貫き通してください。

きっと、それ以上の展開は無いでしょう。

一生、何も変わりません。


挨拶のできる先輩。

良い先輩とは、どこで見分けるのか。
個人的には、接客五大用語に加えて、人生五大用語が言える人ではないでしょうか。

◆接客五大用語
「いらっしゃいませ」
「少々お待ちください」(かしこまりました)
「お待たせ致しました」
「申し訳ございません」
「ありがとうございました」

腰の角度を斜め45度に、上半身を前に倒します。
終始、お客様の目を見る。
そして、心をこめて言う。

◆人生五大用語
「おはようございます」
「ありがとうございます」
「すみません」
「お願いします」
「お疲れ様でした」

売り場だけ、愛想がいい先輩はダメ。
お客に正体、見ぬかれていますから。

変な値段設定したり、如何わしい物を細工して、勝手に売っていたり。
見破られているのを、知らないのは本人だけ。

挨拶のできる先輩。
あなたの良き、相談相手になってくれることでしょう。


不機嫌な先輩。

接客業の基本は、まず笑顔。
家庭でナニがあるか解かりませんが、売り場で笑顔のない先輩。

パートA
「あの主任、水曜日になるとスゴイ機嫌が悪いよね。○○君怒鳴りつけてるし」

パートB
「なんか、火曜特売の売上が悪いらしいよ。なんかイツでも、笑顔が無いし」

ハートC
「ううん。でも、それだけじゃないみたいよ。お嫁サンとお姑サンが仲良くないんだって。子どもの世話を全部、お姑サンに任せてるんですって」

パートB
「そう言えば、いつも帰りに買い物してるよね。奥さん、買い物しないのかしら」

パートC
「家へ帰るといつも嫁と姑との板ばさみで、かなり苦しんでるらしいよ」

パートB
「えー。家庭問題を引きずってるって、感じだったもんねぇ」


独身でも、私生活が順調とは限りません。

しかし、仕事とプライベートは別。
プライベートが上手く行かないのは、あなたの甲斐性が無いだけ。

私事と仕事を区別できない人の売り場では、
既に「商品の部門内別居」が始まっています。

売り場を見ればわかります。
売り場は担当者の鏡ですから。

なんとも、整理整頓がなっていない、落ちつかない売り場です。


整理整頓できる先輩。

好きな相手にフラれようが、家へ帰っても風呂も沸いてなくて、
かーちゃんがマグロ化している日々が続こうとも。

「店で毎日マグロ売ってて、家に帰ってもマグロかーちゃん」と嘆きつつ、
「ウチのマグロかーちゃんより、店のマグロの方が美味くて新鮮だよっ」
と呼び込みしておられた、鮮魚主任もいます。

新社会人にも、仕事とプライベートを上手く分ける術を見出してほしい。

笑う角には福来る。
笑顔ある店には客が来る。


自滅する先輩。

接客業の基本は、まずお客優先。
自分優先で仕事している先輩は、近いうちに自滅します。

お客
「すみません。この靴下、ここで買ったんですけど、同じのって何所にありますかねぇ」

一向にうつむいたまま、動こうとしない店員。
冬物靴下のタグを取り替えて、割引シールを貼っている。

どうやら、もう何足かで作業が終わるようで、
区切りがつくまで待たせられる。

お客
「お待たせしました。あ、で、何の御用件だったでしょう」

お客
「すみませんが、この靴下」

店員
「ああ、返品ですね。レシートはお持ちになったのでしょうか」

お客
「いや、コレと同じ物が欲しいんですけど」

店員
「ああ、これでしたら、あちらの紳士靴下コーナーの上段にありますよ」

指差しただけで終わり。

しかし、行ってみると無い。
しょうがないので、戻ってみました。

お客
「やっぱり無いんですよねぇ。これ」

店員は不思議そうに見る。

思い出したかのように、手元の靴下を持って、
「ああ。これですね。これでした。今丁度、割り引いて売り場に戻すところでした」


もう、脳みそ洗って出直してほしい。


商品知識のない先輩。

接客業の基本は、まず知識。
長年勤めた顔して、商品知識のない先輩は、単なるマネキン人形。

お客
「この牛肉と豚肉って”厳選”ってシールが貼ってあるけど、普通と何が違うの?」

主任
「はあ。こちらは当社指定の農家で育てられた、お薦めのお肉でございます」

お客
「厳選って、誰が厳選したの?」

主任
「はあ。多分、バイヤーか商品開発部長じゃないかと」

お客
「バイヤーと開発部長って、特別の資格でも持ってるの?」

主任
「さあ。バイヤーは確か地元の短大ですけど、商品部長は東北の人だったんですよ」

お客
「東北。米沢か山形の専門化の方なの?」

主任
「うーん。多分そうかもしれません」

お客
「ところで、指定農家ってどこにあるのよ」

主任
「は!こちらのボードにあります、北僻地郡山奥村の行止さんでございます」

お客
「農薬を使わない飼料を使ってるって書いてあるけど。どこの飼料を使ってるのよ」

主任
「え?ははぁ。多分、専門農家で栽培してるんじゃないですかね」

栽培?

お客
「専門農家?どこの専門農家よ」

主任
「えーと・・・」

お客
「・・・」

このお客。
競合店のパートさんじゃねーのかと、思うほどの質問ですが、
どうして、バイヤーの学歴説明になるのでしょう。

「teruさん。いちいち憶えてられないよ。忙しくてそんな暇ないよ」

であれば、
「本部に聞いて分かり次第、こちらに掲示させていただきます」
って言えばいいじゃないですか。

勤続年数だけが、その人の存在価値ではありません。
商品知識の多さと作業性効率の良さ、性格の良さが貴重な存在価値です。

数字を追うだけでは、長続きしません。


不摂生な先輩。

接客業の基本は、まず健康。
体質的な違いもありますが、見るからに怠け者の先輩は、単なる粗大生ゴミ。

仕事が忙しすぎて不健康になるならまだしも、
夜遊びやゲームして、寝不足気味でふらふら出社する先輩。
平気で遅刻。

いくら若くても、少なからずとも作業に影響はあります。

◆夜遊び好きなチェッカー
レジであくびばかりしていて、総菜部へ移動。
あくびしながら、コロッケ揚げるんですか?

◆店舗裏でタバコばかり吸っている主任。
チンタラしてて、仕事はパートさん任せ。
パートさんや他の社員に邪魔にされる。

もう、冬の日本海に捨ててあげたい。(不法投棄)


夢を売る商売。

接客業って、品物だけ売るんじゃないんです。
来て頂いたお客様に、夢を売る商売なんです。

「teruさん。夢を売るのは、宝くじ売り場では?」

では、考えてみてください。

◆単に物を売る場所
・音楽が流れていない。
・ワゴンで短調に積まれている衣料品。
・桜枝の販促も、クリスマスツリーも無い。
・季節を色取る、マネキン人形も無い。
・白い冷たい冷蔵ケースに、レシピも無く、整然と並ぶ生鮮食料品。
・もちろん店員も無表情。

いつものスーパーとは、違いますよね。

そう考えると、スーパーは「お客に物を売る」だけではないようです。

その「売る」他に何をしているかと言うと、販促を使ったり、店内にBGMを流したり。
もちろん、店員の笑顔もありますし、そこにはお客との会話もある。
自然と「夢」を売っているとは思いませんか?

だから、お客は買い物に来るんです。
毎週、毎日、靴を履き、わざわざあなたの店へ来てくれるんです。

わざわざお金を持って、わざわざ出掛ける場所ってどこでしょう。
スーパーなんです。コンビニなんです。お店なんです。
皆さんの職場なんです。

人は、そこに何かを求めて行くんです。
何かあると思うから行くんです。
何かあってほしいと思うから行くんです。

お客はそこに何も無いと思ったら、
汗水流して稼いだお金持って、わざわざ行かないでしょう。

「ただ、 欲しい物買うだけだから来るんじゃねーのか?teruさんよ」

ただ、欲しい物だけを買いに来る人が、催事コーナー眺めるでしょうか。
用も無いのに、とりあえず帰りにコンビニ寄るでしょうか。

わざわざ来てくれるんですよ。
車、バイク、自転車乗って、歩いて、貴重な時間をかけて来てくれるんですよ。

そんなお客さんに「夢を売りたい」って、
世界で一人でもイイから、そんな言葉を言って欲しいじゃないですか。

夢を売りたいじゃないですか。
売りましょうよ。夢を。

夢を売る事を、夢見る店員がいたってイイじゃないですか。

自分の作った売り場を見て、買わなくても笑顔で指差して、会話して帰ってくれるだけでもイイじゃないですか。
大切にしましょうよ。

そう言う時間、減ってきてません?
そんな貴重な時間。

減ってますよ。


夢を売るには。

お客様の気持ちになる。

しかし、忙しかったり時間に追われたりすると、忘れがちに。
そんな時は、イライラを抑えて考えてみます。

「このお客は、今何を考えているのか」
「何を望んでいるのだろう」

この一点で、あなたの売り場が「夢を売る売り場」へと変身。

当然ながら売り場作り、販促物に頼ることもありますが、
人間対人間のふれ愛を基本としていれば、
おのずと「夢を売る売り場」に変わります。

夢を売る店員。
増えることを期待しています。


※本稿は過去記事をリライトしたものです。